1月27日、柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)は、島根県松江市で開かれた自民党県議の集会で少子化対策に触れて以下のような発言をしました。
「なかなか女性は一生の間にたくさん子どもを生んでくれない。 人口統計学では、女性は15歳から50歳が出産する年齢で、その数を勘定すると大体わかる。ほかからは生まれようがない。」(要旨)
「産む機械っつちゃなんだけども、装置がですね、もう数が決まっちゃったと、機械の数、機械っつちゃ・・・けども、そういう時代が来たということになると、あとは一つの、まあ、機械って言ってごめんなさいね その、その産む、産む役目の人が、一人頭で頑張ってもらうしかないんですよ、そりゃ」(言葉のママ)
率直なところ、かなり大胆な発言です。これらの発言について、マスメディアが「柳澤大臣『女性は(子供を産む)機械』と発言」と一斉に報道し、一般の国民や野党はもちろんのこと、与党の一部からも激しい批判の声があがりました。発言を巡る騒動は外国のメディアでも報道され、「産む機械」を書いたパロディTシャツが売り出されたほどです。
野党は大臣の辞任を要求し、柳澤大臣はこの発言について2日後の1月29日になって「表現が不適当だった」と陳謝したものの、大臣辞任の意志はない事を表明しました。この結果、一時は国会審議が停止するほどの騒ぎになり、自民党内からも辞任を求める声が上ったばかりでなく、野党からは厚生労働大臣に任命した安倍晋三に任命責任を問う声も上がりました。円より子(民主党)、福島瑞穂(社民党)、後藤博子(国民新党)、吉川春子(共産党)は野党超党派の女性議員グループとして柳澤大臣の辞任を要求したほか、民主・社会民主・国民新の野党3党も、1月30日に内閣総理大臣の安倍晋三に罷免要求を提出しましたが、いずれも拒否されました。そこで、民主・社民・国民新の3党は1月31日に審議が開始された平成18年度補正予算案審議を欠席し、共産党は抗議の上退席するなど、国会は大混乱となりました。
結局、柳澤大臣は辞任しないまま、2007年8月に発足した安倍改造内閣まで厚生労働大臣を務めることになるのですが、この発言は、妊娠・出産に対して敬意や尊重の感覚を持たず、単なる「人間調達の手段」と考えている男性や社会の認識の低さや感覚を露骨に示したものとして語り継がれることとなったのです。
★この年の主なできごと★
参議院で民主党が第一党に :7月29日に行われた第21回参議院議員選挙で民主党が初めて第一党ととなり、与野党が逆転。自民党は改選64議席が37に激減、第15回参議院(1989年)に次ぐ惨敗。29の一人区は6議席だけで、ベテラン・大物議員も次々と落選した。
食品賞味期限の改ざん相次ぐ :8月に北海道みやげで知られる「白い恋人」の製造元である石屋製菓が賞味期限を本来の一ヶ月先の日付に改ざんしていたことが発覚。10月には三重県伊勢市の「赤福」が製造日・消費期限を改ざん、船場吉兆の福岡市の店舗でも菓子や惣菜の消費期限の改ざんなど、食品の賞味期限表示に関しての不祥事が相次いだ。