この年の12月20日、石原慎太郎・東京都知事の「閉経して子どもの産めない女が生きているのは無駄」という発言に対して、「女性の尊厳を否定し、差別と排除をあおる」として都内在住・在勤の
女性131人が損害賠償と謝罪広告を求めて提訴しました。
問題とされた発言は『週刊女性』2001年11月6日号に掲載された「独占激白“石原慎太郎都知事吠える!”」の記事中のものです。この中で石原知事は次のような発言をしています。
「これは僕が言っているんじゃなくて、松井孝典(注:東大名誉教授の惑星学者。しかし、松井氏は実際にはこのような発言はしていない。したがってこの説は石原知事個人の考えと解釈すべきである)が言ってるんだけど“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは「ババア」”なんだそうだ。“女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です”って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む能力はない。そんな人間が、きんさん・ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。」
公的な立場の人間の発言としてはあり得ない暴言です。当然の結果として石原知事のこの発言は論議を呼び、非難の声が高まりました。しかし知事が自らの発言についてあくまでも非を認めない態度に終始したため、怒り心頭に達した女性たち131名が原告となり、約1440万円の損害賠償と謝罪広告を求めて石原知事を提訴したのです。
この訴えに対する第一審判決は2005年2月24日に東京地裁に下されましたが、被告・石原知事の発言を「憲法、(中略)その他の国際社会における取組の基本理念と相容れない」「東京都知事という要職にある者の発言としては不用意」などと指摘しながらも「原告ら個々人の名誉が毀損されたかということになると疑問である」などとして「損害賠償の請求は認められない」ということから原告らの請求は棄却されました。原告らはこの判決を不服として、同年3月9日東京高裁に控訴しましたが、9月28日の高裁判決もほぼ一審同様の内容で、原告らの控訴はまたもや棄却されたのです。
雅子妃についてのノンフィクション『プリンセス・マサコ』の著者であるベンジャミン・ヒルズは自著の中で、「日本ではこうした侮辱に対する罰則が定められていない。西洋人の目からみて驚くのは、こんなとんでもない発言をして喜んでいる石原のような社会的野蛮人がいるという事実ではない。むしろ、裁判所がこれを許したという事実である」と激しく批判しています。
★この年の主なできごと★
健康増進法が成立。健康は「国民の義務」に。 :7月26日、国民の義務として「健康であること」を定める健康増進法が成立。施行は2003年5月1日からだが、この法律の成立に伴って駅をはじめとする公共の場所での喫煙の規制が広がり、それまで事実上の野放し状態だったタバコが、「喫煙所のみで吸えるもの」となっていった。
完全週休2日制「ゆとり教育」が始まる:4月1日、学習指導要領の見直しが図られ、完全週休2日制のゆとり教育がスタート。とはいえ、実際は土曜日は塾や習い事のスケジュールを入れる家庭も多く、子どもにとっては必ずしも「ゆとりのある生活」が送れることを意味していたわけではない。また、この時期に学校時代を送った児童は後に「ゆとり世代」などと呼ばれ、本来身につけるべき知識や経験を十分に得ていないと見なされることも多かった。