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1999(平成11)年
低容量ピルが医薬品として認可される
この年、厚生省(当時)は1999年6月にホルモン量の少ない経口避妊薬である「低用量ピル」を医薬品として承認。同年9月から処方箋があれば入手できるようになりました。1990年7月の申請から実に9年間にわたる異例の長期審査を経ての解禁です。ちなみに国連加盟国189カ国でピルが承認されていなかったのは、日本だけでした。
それまで日本で用いられてきたピルは中・高容量ピルでした。これに比べて低用量ピルのホルモン量(エストロゲン、プロゲステロン)は半分以下にまで軽減されています。
低用量ピルは避妊に対してほぼ100%の効果を示すばかりではなく、月経困難症、月経過多、月経不順などに対しても有効であるのは中・高容量ピルと同様ですが、ホルモン剤服用に起因する副作用症状は、かなり軽減されています。
「ピル」はしばしば副作用のマイナス面が強調されることもありますが、もともと体内で作られる女性ホルモンで作られたものです。避妊の目的以外にも月経の周期が確立する、経血量が減るために月経期の不快さが軽減されるなど女性のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させるメリットが多いことも見逃せません。マイナスの副作用が皆無というわけではありませんが、プラスの副作用を無視してピル自体を否定してかかるような論調はバランス感覚を欠くように思えます。ピルに対して否定的な見解を持つ人たちは、「ピルは利権の巣窟で産婦人科医と製薬会社は結託して女性の身体を食い物にしている」という論理を展開しますが、ピルの存在が現実に女性の生活の質を高めていることは否定できない事実です。また、実際にピルを使用するかどうかは本人が医師と相談して決めることなので「選択肢を増やす」という意味においても低用量のピルの認可がもたらしたものは大きいと言えるでしょう。
ところで、この年もうひとつ承認された薬があります。男性の性的不能治療薬「バイアグラ」です。この薬は申請からわずか5ヶ月でスピード承認されたことが話題となりました。この背景には、未承認段階で個人輸入が先行し、医師の診断がないまま独自の判断で服用する危険性への歯止めが理由とされましたが、承認後も個人輸入は自由なのでこの理由付けは必ずしも適切とは言い切れません。
女性用の避妊薬の承認に9年、男性性的不能治療薬の承認に5ヶ月という落差は一体何を意味しているのでしょう。女性には「生殖のための性」(=産まない選択は許さない)、男性には「快楽の為の性」(=自己決定権が与えられる)という、男性主導の一方的な価値観によるダブルスタンダードが感じられるように思えてなりません。
男女共同参画基本法施行 :6月23日、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」の実現に向けて男女共同参画基本法が公布、施行された。この法律の制定の背景には出生率の低下がある。将来予測される労働力や税収の減収に対して、女性の労働力化の促進と男女が子どもを育てながら働ける社会環境の整備が急務とされた。
「五体不満足」が400万部を超える超ミリオンセラーに :先天性四肢切断という障害を持つ早大生、乙武洋匡さんが表した自伝がベストセラーに。「障害は不便です。だけど不幸ではありません」と綴る超ポジティブな生き方に多くの人が共感したが、一方で障害者の中には乙武さんのスタンスには同調できないという声も。乙武さんは早大卒業後、スポーツライターとなり、その後区立小学校教師としても活躍している
「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。
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