働く女性の50年史(19)

 

1987(昭和62年 

「配偶者特別控除」が新設される

税制改革の一環として従来の「配偶者控除」に加えて、「配偶者特別控除」が新設されました。これは、例えば夫がサラリーマンで妻がパートという世帯で、配偶者である妻の所得金額が38万円を超えると、夫は配偶者控除を受けられなくなり、税負担が増額することになるので、妻の所得金額が38万円を超えても夫の控除額がいきなりゼロにならないよう、「配偶者特別控除」によってなだらかに控除額が減少していくしくみにしたものです。

 しかし、ここで覚えておくべきなのは日本の税制は基本的に「個人単位課税」であるということです。これは「夫の収入は夫のものであり、妻の収入は妻のものである」という意味です。決して「夫と妻の収入を合算して頭数で割る」(=「世帯単位課税」)ではありません。それなのに、夫婦のどちらの収入が他方の税額に影響を及ぼす「世帯単位課税」を「配偶者控除」や「配偶者特別控除」についてのみ取り入れていることは非常に変則的といえるでしょう。

 もし、夫婦いずれかの収入が他方の税額に影響を与えることを前提と考えるのであれば、「世帯単位課税」を導入すべきです。また、あくまでも「個人の収入は稼いだ人のもの」と考えるのであれば、配偶者控除や配偶者特別控除の存在は「個人単位課税」の考え方と相反することになります。このようないびつな税制が主婦が税金や社会保険料の負担を避けるために年収が103万円を超えないように就労調整をする行動につながり、それが結果的には女性の賃金を抑制する機能を果たしていたことは見逃すことはできません。

 

★この年のできごと★


「アグネス論争」で子連れ出勤が話題に:作家・林真理子が『週刊文春』で歌手アグネス・チャンの子連れ出勤を批判し『アグネス論争』が展開された。上野千鶴子や小浜逸郎などの論客が途中から参戦するなど幅広い分野からの発言が相次いだ。

女性用の肩こりマッサージ器が発売される:女性用の肩こりマッサージ器「パタタ」がバンダイから発売された。男女雇用機会均等法施行以降、負荷のかかる仕事をこなす女性が増えたために、ニーズの拡大があったものと考えられる。ただ、1800円 という価格は果たして高いのか、安いのかかなり迷うところだった

 

 

 

 

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ごあいさつ

福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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