働く女性の50年史(17)

1985(昭和60

国連「女性差別撤廃条約」に日本政府が批准

 この年は国際的に女性の地位の向上や権利の拡大に関する動きがいくつも見られた年でした。国連婦人の10年ナイロビ世界女性会議が開催され、157ヵ国約5000人が参加。「2000年に向けて女性の地位向上のための将来戦略」を採択しました。この会議では経済不況・飢餓などがとりわけ女性と子どもを疎外するという事実とその対策に向けての論議が行われました。また、ILO総会では「雇用における男女の均等な機会及び待遇に関する決議」が採択され、国連の「女性差別撤廃条約」に日本政府も批准し、72番目の締結国となりました。

 国際条約とは、それぞれ異なった国内法を持つ国家が、共通の基準や規範を持つことです。条約の「採択」とは提案された条約の内容をまず会議で検討し、「この条約を各国に呼びかけよう」と決めることを意味します。そして、その条約について各国が国内で検討し、「この条約に加盟する」という意思統一ができたら「批准」に進みます。ある条約に「批准」をするためにはその国の国内法が条約の内容に沿っていることが求められます。

 日本の場合、84年に国籍法が「父系優先血統主義」から「父母両系血統主義」に改正されたことや、86年に男女雇用機会均等法が施行されたこと(法律の成立は85年)なども、実は「女性差別撤廃条約」の批准にこぎ着けるためのステップだったのです。女性の権利の拡大や社会的地位の向上は、国内法だけでは実現しないことも多く、やはり「外圧」の存在は無視できないといえそうです。

★この年の主なできごと★

田無市が男性職員の「育児時間」取得を認める。自治体では初めて。:子どもの保育園への送り迎えなどで男性にも育児時間が必要という声が高まる中、東京都田無市は自治体では初めて男性職員にも育児時間を認めた。しかし、当時男性が育児時間を取ることは揶揄の対象となり、育児時間を取得した男性職員たちは、当時濫立していた写真雑誌の格好のターゲットとされた。

厚生省、生活保護基準額の男女差を解消、男女同一扶助基準に:生活保護基準額は食費や被服費などの「個人にかかる経費」と光熱費などの「世帯にかかる経費」にわけて算定されるが、この年まで「個人にかかる経費」について女性は男性の約85%として算定されていた。その理由は「男女で必要摂取カロリーが異なるから」というものだが、このような考え方には合理性がないとして、この年から男女同一扶助基準となった。

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ごあいさつ

福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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