働く女性の50年史(12)

1980(昭和55

女子大生の就職難に当事者たちが立ち上がる

この年、7月にデンマークのコペンハーゲンで第2回「国連婦人の10年中間年世界会議」が開催され、145ヵ国3000人が参加。「女性に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約」に日本政府を含む51ヶ国が署名しました。そこでは「社会と家庭における伝統的な性別役割分業や差別的慣習の見直し」がうたわれていましたが、当時の女性に対する就職差別は今からでは想像もつかないほどひどいものでした。

企業の女性採用は短大や高卒が主で、4年制大卒の女性の採用は非常にわずかでした。主要企業の約7割が大卒女性の採用を行わず、大卒女性の進路は教職や公務員、マスコミ、外資系企業などのごく限られた業種か、弁護士や公認会計士などの国家資格、それでなければ親のコネで一般企業に就職するというのが一般的だったのです。その場合「給与などの待遇は短大卒もしくは高卒扱いで、結婚したら退職する」という不文律も多くの企業で存在しました。もちろん、仕事の内容も男性とは異なった補助的な内容でした。

そのような状況に「もう黙ってはいられない!」と声を上げた女子学生たちがいます。7月には自ら企業の女性の採用情報や差別の実態などを取材し、企業名を実名で掲載した情報誌「私たちの就職手帖」が早稲田大学の女子学生たちにより発行され、11月22日~23日にかけては東京・数寄屋橋公園で明治大学をはじめとする学生により「女子学生の就職差別に抗議するする48時間ハンスト」が行われました。「私たちの就職手帖」は、その後首都圏の大学に在学する女子学生のインターカレッジの活動として定着し、1999年に男女雇用機会均等法の改正法が施行されるまで毎年(ただし、81年は休刊)発行されました。

 

この年の主なできごと★

民法改正で妻の相続分は2分の1に:それまで夫が死亡した際、妻が3分の1、子が3分の2だった法定相続分を、妻も子もそれぞれ2分の1に改正。(ただし、子は2分の1を人数で頭割り)これは、子を3分の2とすると「子が1人の場合は配偶者よりも子の相続分が多い」というアンバランスが指摘されていたことと、「妻の座の優遇」の両方の意味合いを持つ。

 

歌手山口百恵引退:人気絶頂期にあった山口百恵が映画で共演した俳優、三浦友和と結婚して引退。自伝の「蒼い時」はゴースト・ライターを起用せず自ら執筆したと言われ、発売1カ月で100万部を突破した

 

 

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ごあいさつ

福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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