働く女性の50年史(11)

 1979(昭和54

自民党が「家庭基盤の充実に関する対策要綱」を発表

 

70年代の後半には戦後の高度成長期が終わり、低成長期に入ってからは福祉政策の見直しが盛んに行われるようになりました。この年、自民党は「日本型福祉社会の創造」を運動方針に掲げましたが、その内容は「責任と負担・自助・相互扶助」を強調したもので、事実上「男は仕事、女は家庭」という男女性別役割分業を助長するような内容でした。例えば、老親扶養と子の保育・しつけは第一義的には家庭の責務とする一方で、家事や育児に専念する女性や家庭を壊さない程度に賃労働をしている主婦に有利となるような税制が提案され、それらは87年の「配偶者特別控除」の創設(=61年に創設された「配偶者控除」を補完するもの)や80年の妻の相続分の引き上げ(当時は配偶者の相続権は3分の1でしたが、それを2分の1まで引き上げる)などの政策に反映されました。
 
 このような政策は主婦労働の価値を認めているかのようですが、一方では女性の就業や結婚後の夫婦共働きには対しては抑制する効果がありました。「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の存在は、女性の就労意欲を抑え、パートタイマーの賃金相場を下げている点や、基本的人権である働く権利を女性から奪っているという意味では、「制度的間接差別」とも考えられます。また、独身世帯や共働き世帯と比較して専業主婦や一定収入以下の妻を持つ世帯だけが税制上の優遇を受けることになり、世帯間に不公平感が生じます。今、私たちの多くが「どこかおかしい」と感じている社会のシステムのルーツは実はこの頃にあると言えるのです。

 

★この年のできごと★

 

英国で初の女性首相:5月にイギリスでサッチャー首相が誕生。「鉄の女」の異名を持つ彼女は福祉政策の縮小に辣腕をふるい、財政的には健全化が進んだが「ゆりかごから墓場まで」と言われたイギリスの社会保障制度は事実上崩壊することになった。    

 

東証1部上場企業で初の女性重役:3月22日、高島屋取締役に石原一子氏が就任。デパートにベビー用品売場を最初に開設するなどの功績が認められた。この年は三越でも女性管理職が大幅に増加。しかし、総理府婦人問題担当室の調査では、当時資本金5億円以上の企業・特殊法人で、課長職以上の女性は0.3%だった。

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ごあいさつ

福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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