働く女性の50年史(5)

1973(昭和48

 「女性の55歳は男性の70歳に匹敵する」と定年差別は合理的との判決(東京高裁)

 

3月12日、日産自動車男女差別定年制の地位保全仮処分の控訴審で、東京高裁は「男性55歳、女性50歳」の定年差別に対し「差別定年は合理的」と棄却の判決を出しました。

判決文には「人間の生理的機能の年令的変化という点においては男女間に特別の差はないが、一般的にみて生理的機能水準自体は女子は男子に劣り、女子の50才のそれに匹敵する男子の年令は52才位、女子55才のそれに匹敵する男子の年令は70才位とみられていること」と記されています。さて、皆さんはこれに納得できますか? おそらく「個体差も大きいのに、どうして性別で決められるの?」という思う人が圧倒的ではないでしょうか。歴史をゆり戻すようなこの判決をきっかけに「定年制の男女差別をなくす会」が有職婦人クラブの呼びかけで結成されました。

ちなみに、この裁判は「地位保全を求める仮処分」と「雇用存続確認を求める本訴」の2つに分かれています。女子労働者からの地位保全を求める仮処分申請では「5歳の定年の差は女子従業員を著しく不当に差別するものではない」と第1審、第2審とも労働者側が敗訴しましたが、雇用存続等確認を求める本訴では第1審、第2審ともに労働者側が勝訴し(男女別定年制は女子労働者を理由もなく差別するもので、企業経営上の合理性は認められず社会的な妥当性を著しく欠くものであるから公序良俗に反し無効である)、19810324日、最高裁は会社側の上告を棄却しました。

 

★この年のできごと★

国電(現在のJR)中央線の快速・特別快速電車の婦人子ども専用車廃止:替わって9月にお年寄りや身体の不自由な人たちの優先席シルバーシートが登場。(しかし、痴漢対策などのために200012京王電鉄平日深夜帯に新宿駅発の下り列車に「女性専用車両」を試験的に導入。好評だったために、翌年から本格導入となり、以後は他の鉄道でも導入が広がった。

 

トイレ用擬音発生装置「エチケットーン」発売:水道用品メーカー折原製作所が、水洗のフラッシュ音を擬音で発生させる装置を女性用トイレに設置。現在多くのオフィスで導入されている擬音装置の源はここから。

 

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福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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