働く女性の50年史(4)

1972(昭和47)

主婦の家事労働に対する損害賠償は賃労働をする女性の8割相当と認定(名古屋地裁)

交通事故で家事労働ができなくなった主婦の損害賠償訴訟で「炊事・洗濯などの主婦の家事労働は外で働く女性の労働と変わらず、その給与は全産業女性の平均給与の8割に相当」という判決が5月31日名古屋地裁で出されました。これは主婦の家事労働の経済的価値を積極的に評価した判決です。しかし、同年、7月19日、京都地裁では交通事故でけがした専業主婦の休業補償請求に対し「算定基準がないためにと認めない」という判決が出ています。

これらの判決に代表されるように主婦の労働については現在でもさまざまな論議や算定があります。米国のSalary.com 20085月に発表した数字では、平均的主婦業の年収117,000ドル(1ドルを94円で換算した場合で約1100円)になるそうです。

日本では1997年に発行された経済企画庁経済研究所発行の「無償労働の貨幣評価について」で家事の年間評価額は、専業主婦の場合、平均304万円、年代別の最高額は3034歳代で410万円と算定されています。これは果たして高いのでしょうか? それとも安いのでしょうか? 一概にはいえないと思いますが、家事労働というものの性質がかなりにまで環境や人によって変わるために、統一基準がないことが算定を一層難しくしていると言えるかもしれません。 

 

★この年のできごと★

「中ピ連」結成:「中ピ連」とは「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」のこと。避妊用のピルの解禁を要求する活動やピンクのヘルメットを着用して浮気をした夫の会社に押しかけ「吊し上げ」と呼ばれる抗議行動を行い、マスコミを賑わせた。「中ピ連」は75年に解散するが、代表の榎美沙子は77年に「日本女性党」を結成し、6月の11回参議院議員通常選10人の候補者を送り込むが全員落選。同党は解散した。

 

沖縄の本土復帰515日、沖縄の施政権が米国から日本に返還された。沖縄は第二次世界大戦後の51年に署名されたサンフランシスコ平和条約で、潜在的な日本の主権は認めながらも米国の施政権の下にあるとされ、一定の自治権は認めながらも最終的な意思決定権はアメリカが握っていた。本土復帰委を期に沖縄は「沖縄県」となり、通貨もドルから円となった。しかし、米軍基地駐留などは続き、米兵と住民とのトラブルはその後も続くこととなった。

 

 

 

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福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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