働く女性の50年史(37)

2005(平成17)年

「個人情報保護法」全面施行

 

この年の4月から「個人情報保護法」が全面施行されました。これは本人の意図しない個人情報の不正な流用や、個人情報を扱う事業者がずさんなデータ管理をしないように、一定数以上の個人情報を取り扱う事業者を対象に義務を課す法律です。具体的には以下の5つの原則から成り立っています。

 1) 利用方法による制限(利用目的を本人に明示)
 2) 適正な取得(利用目的の明示と本人の了解を得て取得)
 3) 正確性の確保(常に正確な個人情報に保つ)
 4) 安全性の確保(流出や盗難、紛失を防止する)
 5) 透明性の確保(本人が閲覧可能なこと、本人に開示可能であること、本人の申し出により訂正を加えること、同意なき目的外利用は本人の申し出により停止できること)

 この法律が施行されたことで、本人の了解がないままに個人情報の流用や売買、譲渡は規制されることになりました。皆さんの中にはこれまで何かのアンケートに答えたら全く関連性のないところからダイレクトメールが届いたというような経験はありませんか? それはおそらく名簿の売買が行われていたのです。
 しかし、この法律が施行されたことによって、そのような勝手な流用はできなくなりました。一定数以上の従業員を持つ企業や、カルテを持つ医療機関など、個人情報をデータベース化(電子情報、紙データは問わず)している事業者は、個人情報を第三者に提供する際に、利用目的を本人に通知し了解を得ることを求められるようになり、同時に不正流用防止のための管理を行う義務も発生しました。 

 これを守らない場合、本人の届け出や訴えで、事業者に刑罰が科される可能性もあります。ただ、問題点としては「当事者が苦情処理機関または当該事業者に訴えでない限り、個人情報保護法が実効性を持つことは不可能」という点が挙げられます。つまり、政府による監査機能のない状態では事業者の姿勢に左右される可能性が極めて高いのです。したがって、この法律は「自分の個人情報の取り扱いに対して慎重になろう」ということを気づかせてくれるものと解釈すべきでしょう。何に使われるのか分からないものに正確な個人情報を記載することを避けたり、自分だけに分かるルールを作っておく(例えば、氏名の漢字を一字だけ変えておく、など。そうすればどのルートで情報が漏れたかの推測がつく)というような対応も場合によっては必要かもしれません。

 

★この年の主なできごと★

日本の総人口の減少開始・出生率も過去最低の1.26に :厚生労働省の2005年の「人口動態統計」(年間推計)によれば、出生数は前年比4万4000人減の106万7000人、死亡数は同4万8000人増の107万7000人となり、差し引きで1万人の「自然減」に。出生数が死亡数を下回る自然減は1899年に統計を取り始めて以来、初めて。また、出生率は過去最低の1.26人となった。

紀宮さま黒田慶樹さんと結婚 :2005年11月15日、紀宮清子内親王が東京都職員黒田慶樹さんと東京・帝国ホテルで結婚式を挙げた。前年のベストセラー「負け犬の遠吠え」の中で「最後の大物」と表現された紀宮さまもついに結婚。新婦36歳、新郎40歳という「成熟婚」は、多くの人の共感を呼び、新郎の黒田さんのひょうひょうとしたキャラクターにも好意的なコメントが相次いだ。

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ごあいさつ

福沢恵子

「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。 

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