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1989(平成元)年
「選択的夫婦別姓」への関心高まる
この年は、結婚後の夫婦がそれぞれの姓を名乗る「夫婦別姓」に対して社会的な関心が高まった年でした。1月に東京弁護士会が「選択的夫婦別姓採用に関する意見書」を法務省に提出し、3月には夫婦別姓の法制化を実現する会による「楽しくやろう夫婦別姓--各党熱烈大討論会」が開催されました。
民法750条は法律婚をする夫婦は夫または妻の氏を称することを定めていますが、実際は97%の女性が結婚により夫の姓に改姓しています。もちろんそれが本人の意思であれば問題ありませんが、実際には自分の姓を名乗り続けたいにも関わらず社会的慣習や周囲からの圧力で改姓を強いられているケースもあります。結婚・離婚などで改姓することは本人の意思に関わらず個人情報を第三者に開示することになり、改姓に伴う事務手続きの煩雑さも決して無視できません。また、仕事上は旧姓を通称として使える環境にあっても、パスポートや国家資格などでは戸籍名の使用が求められます。
そのような煩雑さを避けたいと、婚姻届を出さない事実婚を選択すると、法律婚では自動的に保護される夫婦の権利(相続権や扶養控除など)が認められず、子どもが出生した場合も、非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の子)として、有形無形の差別がつきまといます。つまり、法律婚を選択して旧姓を通称として使うことにしても、事実婚で戸籍上も夫婦が自分の名前をキープするにしても、それぞれ「痛み」を強いられるのが、これまでの「夫婦別姓」だったのです。
夫婦別姓に反対する意見の中には「家族の一体感を損なう」とか「このようなことは取るに足らないこと」などという声もありましたが、これらはいずれも改姓の不便さや痛みを感じることのない立場からの発言というべきでしょう。また「喜んで改姓する女性もいるのだから」「所詮少数派の意見に過ぎない」という意見に至っては、あまりにものごとを一面的にとらえていると云わざるを得ません。たとえ結婚後もそれぞれの姓を名乗り続けることを希望する夫婦が少数派であっても、その人たちの選択も尊重されるべきなのです。「選択的夫婦別姓」の実現は、一定の価値観を強要するのではなく、多元的な価値観もお互いに認め合う風通しの良い社会のひとつのあかしであるように思います。
日本初のセクハラ裁判提訴:上司から性的な中傷を受け退職に追い込まれたとする女性が福岡地裁に提訴、日本で最初のセクシュアル・ハラスメント裁判となる。福岡地裁は92年4月、上司と会社の責任を認め、原告の女性に損害賠償(165万円)支払いを命令した。
参議院で自民党大敗:7月の参院選で自民党が大敗し、結党以来の与野党逆転となる。社会党は大躍進、女性は過去最高の22人当選となり、「マドンナ旋風」と呼ばれる。宇野首相は、愛人問題のスキャンダルで退陣。
「女性のキャリア形成支援」「男女共同参画」「大人の学びなおし」をメインテーマに取材や講演を手掛けて30年。仕事を通じて「誰もが自分らしく生きることができる社会」の実現に関われたらと思っています。
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